家族を在宅介護する場合の注意点5つ

高齢者の増加に伴い、家族の在宅介護する場合の注意点について説明します。
介護制度等については、2018年4月時点での説明となります。
 

1.家族を在宅介護する場合に注意すべき5つのポイント

高齢者の中には、施設への入所ではなく、自宅でいつまでの自由きままに暮らしたいと、在宅介護を望む人も大勢います。その希望に応えようと、娘や息子が親の在宅介護を引き受けることも多いことでしょう。そこで、在宅介護する場合に注意すべき5つのポイントについて以下の順番で説明します。
(1)在宅介護による高齢者の「廃用症候群」に気を付ける
(2)在宅介護による高齢者の認知症の進行に気を付ける
(3)在宅介護による高齢者のケガに気を付ける
(4)在宅介護による介護者の健康管理に気を付ける
(5)在宅介護による介護者の「介護うつ」や「高齢者虐待」に気を付ける
 

2.(ポイント1)在宅介護による高齢者の「廃用症候群」に気を付ける

(1)廃用症候群とは

在宅介護では、ベッドで気ままに過ごしたいという高齢者の希望を重視するあまり、高齢者の全身機能の低下が進み、廃用症候群となることがあります。
廃用症候群とは過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体機能の低下した症状をいいます。
病気になれば、安静にして、寝ていることがごく自然な行動ですが、このことを長く続けると、廃用症候群を引き起こしてしまいます。
過度に安静にし、あまり身体を動かさなくなると、筋肉がやせおとろえ、関節の動きが悪くなります。
最悪な状態では、寝たきりとなってしまうことがあるので注意が必要です。

(2)廃用症候群の症状

①筋萎縮・・・筋肉がやせおとろえる症状
②関節拘縮・・・関節の動きが悪くなる症状
③骨萎縮・・・骨がもろくなる症状
④心機能低下・・・心拍出量が低下する症状
⑤起立性低血圧・・・急に立ち上がるとふらつく症状
⑥誤嚥性肺炎・・・唾液や食べ物が誤って肺に入り起きる肺炎
⑦血栓塞栓症・・・血管に血のかたまりがつまる症状
⑧うつ状態・・・精神的に落ち込む症状
⑨せん妄・・・軽度の意識混濁のうえに目には見えないものが見え、混乱した言葉づかいや行動を行う症状
⑩見当識障害・・・今はいつなのか、場所がどこなのかわからない症状
⑪圧迫性末梢神経障害・・・寝ていることにより神経が圧迫され、麻痺がおきる症状
⑫逆流性食道炎・・・胃から内容物が食道に逆流し、炎症がおきる症状
⑬尿路結石・尿路感染症・・・腎臓、尿管、膀胱に石ができる、細菌による感染がおきる症状
⑭褥瘡(じょくそう)・・・床ずれといわれる皮膚のきずができる

(3)廃用症候群の予防法

脳卒中、神経痛やリウマチなど、マヒや動くと傷む病気の場合、ベッド中心の生活になりがちです。
自分のために手間をかけさせまいと遠慮がちな要介護者は、ベッドの上で放っておいてもらいたいと言うかもしれません。
しかし、言葉通り放っておけば、要介護度はどんどん進みます。
マヒがあれば、マヒを軽減するリハビリや、マヒがあっても日常生活を送れるよう訓練することが大事です。
介護保険を利用した通所または訪問によるリハビリテーションを活用しましょう。
 

3.(ポイント2)在宅介護による高齢者の認知症の進行に気を付ける

(1)認知症とは

認知症とは、脳の変性疾患や脳血管障害によって、記憶や思考などの認知機能の低下が起こり、6カ月以上にわたって、日常生活に支障をきたしている状態をいいます。
認知症の主な原因疾患は、脳の変性疾患であるアルツハイマー病が一番多く、次いで、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって起こる脳血管性認知症が多いそうです。
その他にはレビー小体の変性によるレビー小体型認知症や、ピック病による前頭側頭型認知症などがあります。
65歳未満で発症すると若年性認知症といわれます。
認知症の人の物忘れと正常な物忘れには大きな違いがあります。
認知症の人の場合には、物忘れ自体に気付きませんが、正常な物忘れでは、忘れたことに気付き思い出そうとします。

(2)認知症の進行の予防法

物忘れがひどくなり、徘徊や妄想など異常行動が多くなってきた場合、認知症の可能性があります。
高齢者本人はできるだけ早く医師の診断を受ける必要があります。
そして、家族にとっては認知症についての理解が大切です。
認知症は徐々に進みます。
そこで、認知症の高齢者の家族は、高齢者を寝たきりにしたり、部屋に孤立させることなく、コミュニケーションをとることにより、認知症の症状を緩和するなどの工夫が家族に求められます。
 

4.(ポイント3)在宅介護による高齢者のケガに気を付ける

加齢により身体が弱体化する症状として、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームがあります。

(1)フレイル

フレイルの状態とは、何らかの病気にかかりやすくなったり、入院するなど、ストレスに弱い状態になることをいいます。
フレイルの状態となると、体重減少、疲れやすい、歩行速度の低下、握力の低下、身体活動量の低下が起こります。
フレイルには、体重減少や筋力低下などの身体的な変化だけでなく、気力の低下などの精神的な変化や社会的なものも含まれます。
 

(2)サルコペニア

サルコペニアとは、加齢や疾患により、筋肉量が減少することで、握力や下肢筋・体幹筋など全身の筋力低下が起こること、または、歩くスピードが遅くなる、杖や手すりが必要になるなど、身体機能の低下が起こることを指します。
 

(3)ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態をいいます。
運動器とは、身体を動かすために関わる組織や器管のことで、骨・筋肉・関節・靭帯・腱・神経などをいいます。
高齢者の増加により、運動器の障害によって、日常生活に支援や介護が必要となる人が増加しています。
厚生労働省 国民生活基礎調査 平成28年度 要介護度別にみた介護が必要となった主な原因をみると、関節疾患や骨折・転倒の割合が高く、運動器の障害が原因の介護が多いことが分かります。
 

(4)高齢者の家の中でのケガ

高齢になると、わずかな段差でつまずき転倒することがあります。
そして、転倒により骨折し、介護が必要となることもあり得ます。
そこで、在宅介護では、高齢者の転倒防止が重要となります。
転倒予防のために、段差があれば、段差がなくなるように、カーペットを敷いたり、リフォームをすることも有効です。
在宅介護する場合、手すりや段差解消などの「住宅改修費」が20万円(自己負担割合に基づく自己負担有り)まで給付を受けられます。
 

5.(ポイント4)在宅介護による介護者の健康管理に気を付ける

在宅介護する家族が病気になれば、介護を続けるのが困難になります。
そこで、在宅で介護を続けるには、介護する家族の健康が重要になります。
身体の健康のためには、体操やウォーキングなどのスポーツをし、食事や睡眠に気を付けましょう。
 

6.(ポイント5)在宅介護による介護者の「介護うつ」や「高齢者虐待」に気を付ける

在宅介護では、家族は24時間、高齢者の介護と向き合わなくてはなりません。
そのため、ストレスをため込み、体調に変化が出て、悪化すると「介護うつ」や「高齢者虐待」の心配が出てきます。
ストレスを感じたら、早めに気分転換をしましょう。
気分転換のため、短期入所サービスを利用して、短期間、要介護者と離れるのも有効です。
介護のことでケアマネジャーに相談したり、認知症家族の会に参加するなど、自分なりのストレス解消法を見つけることをおすすめします。
 

7.「家族を在宅介護する場合の注意点5つ」まとめ

・在宅介護による高齢者の「廃用症候群」に気を付けましょう。
・在宅介護による高齢者の認知症の進行に気を付けましょう。
・在宅介護による高齢者のケガに気を付けましょう。
・在宅介護による介護者の健康管理に気を付けましょう。
・在宅介護による介護者の「介護うつ」や「高齢者虐待」に気を付けましょう。

一般社団法人マイライフ協会

代表理事 児玉浩子