子どもがいない夫婦の相続
数年前に、有名な俳優の夫婦が、「子どものいない人生を選んだ」と公表したことがありました。
結婚しても子どもを持たない夫婦も多くなりました。
また、
晩婚化が進み、約6組に1組の夫婦が不妊治療にとりくんでいるともいわれています。
このように、子どもがほしくてもいない夫婦も増えています。
では、子どもがいない夫婦の相続はどのようになるのでしょうか?
子どもがいなくても兄弟姉妹がいた場合の相続
平均寿命は女性の方が長いので、先に夫が亡くなり、妻が残されることがおおいのではないでしょうか。
夫が亡くなったが、夫の両親はすでに亡くなっており、妻と夫の兄弟姉妹が相続人となる場合です。
配偶者は常に相続人となります。
下の表は、配偶者とともに相続人となる人がいる場合の順位です。
法定相続人の順位
順位 | 相続人 |
第1順位 | 子 |
第2順位 | 直系尊属(親など) |
第3順位 | 兄弟姉妹 |
たとえば、
A男さんはB子さんと結婚しました。
しかし、子どもができませんでした。
A男さんが亡くなったとき、弟C男さんがいました。
この場合、
法定相続人は配偶者である妻B子さんと、弟C男さんです。
法定相続分は、法定相続人の順位に従い、
妻B子さんが4分の3、
弟C男さんが4分の1です。
妻である女性からこのような相談をよく受けます。
子どもがいないから、夫の財産を自分が全部相続できると思って、夫に遺言書を作成してもらわなかった。
夫が亡くなってから、夫の兄弟たちから財産を分けてくれと言われて困っているというものです。
遺言書がない場合には、法定相続になります。
すると、兄弟姉妹には、
全財産の4分の1を相続する権利があることになります。
そのため、
妻は残念ながら、夫の財産をすべて相続することはできなくなります。
子どもがおらず、甥(おい)や姪(めい)がいる場合の相続
たとえば次のような場合を考えてみましょう。
A男さんはB子さんと結婚しました。
しかし、子どもができませんでした。
A男さんが亡くなったとき、両親、兄Cさんはすでに亡くなっていました。
亡くなった兄Cさんには、子どもD男とE子がいました。
配偶者は常に相続人となります。
そこで、B子さんは相続人です。
では、ほかに相続人がいるのでしょうか?
この場合、本来は亡くなった兄Cさんが妻Bさんと一緒に相続人になります。
しかし、Cさんが亡くなっていることから、
Cさんの子どもD男とE子がCさんに代わって相続することになります。
これを、代襲相続といいます。
D男とE子は、
A男さんの兄Cさんの子どもですから、Cさんが相続するはずであった財産を相続することになります。
そこで、妻B子さんは財産の4分の3、
D男とE子は2人で4分の1、それぞれ8分の1を相続することになります。
よくある妻の勘違いは、
夫の兄弟姉妹が亡くなってしまったので、すべての夫の財産を自分が相続できると考えてしまうことです。
銀行へ行って名義変更をしようとしたところ、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を持ってくるように言われて、甥や姪も相続人であると知って、あわてることもあります。
子どもがいない場合には、
誰が相続人にあたるのか、注意が必要です。
子どもがいない夫婦、妻がすべての夫の財産を相続する方法
遺言書を作成する
では、
子どもがいない夫婦の妻が、夫のすべての財産を相続する方法はあるのでしょうか。
実は、あるのです。
どのようにするのかというと、
夫が、全財産を妻へ残す内容の遺言書を書いておけばいいのです。
なぜ遺言書を書くと、妻が全ての夫の財産を相続できるのか?
夫が遺言書で、
妻へすべての財産を残す内容の遺言書を作成しておくと、どうして、妻はすべての財産を相続できるのでしょうか。
相続に関しては、
民法という法律が規定しています。
民法では、
法定相続人に遺留分というものが認められています。
遺留分とは、
相続人が生活に困らないように、相続人が相続できる相続財産の一定割合をいいます。
ところが、
兄弟姉妹は、通常一緒に生活していません。
そこで、兄弟姉妹には、遺留分がないのです。
そのため、
遺言ですべての財産を妻へ残したい場合、遺留分がない兄弟姉妹には相続財産を請求する権利がないのです。
そのため、妻はすべての財産を相続できることになります。
子どもがいない夫婦の相続まとめ
①子どもがいない場合には、妻と夫の兄弟姉妹が相続人になることが多い。
②夫の兄弟姉妹が亡くなっていても、甥や姪が相続人となる。
③妻にすべての財産を相続させたい場合には、夫は遺言書を作成しておく。
子どもがいない夫婦では、
配偶者である夫や妻と、兄弟姉妹との相続になることが多いです。
その場合、相続で思わぬ争いになり、その後のつきあいができなくなる場合もあります。
事前に夫や妻は、遺言書を作成しておき、相続での争いの芽をつんでおきましょう。
それが、残された配偶者に対する、感謝の気持ちやおもいやりを表す手段ともなります。
一般社団法人マイライフ協会
代表理事 児玉浩子