老後の生活に必要な任意後見契約とは

一般社団法人マイライフ協会代表理事 行政書士 ファイナンシャルプランナー(AFP)
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老後の生活に必要な任意後見契約について、私の著書「99パーセントの人が知らない老後の安心をデザインする方法」から抜き出して説明させて頂きます。

 

1.任意後見契約とは

 

認知症などにかかって判断能力が低下した場合には、後見人を選任して、財産管理などをしてもらう必要が生じます。

この場合、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任してもらう方法(法定後見)がありますが、それ以外にも任意後見契約を締結するという方法があります。

任意後見制度は、任意後見契約に関する法律に基づく制度です。

将来、判断能力が低下したときに備えて、財産管理や介護に関する契約などを信頼できる人にお願いし、引受けてもらう契約を任意後見契約といいます。

法定後見制度とは異なり、任意後見人は家庭裁判所で選任される必要はありません。

高齢者本人が希望に沿った後見人を選任できるのです。

 

 

2.事前に準備できる任意後見

 

任意後見契約の良いところは、老後に備えて事前に準備できるところです。

男女ともに平均寿命が80歳を超える現在、老後はますます長くなりました。

亡くなるまで元気で自分の身の回りのことは何でもできることが理想ですが、なかなかそうはいきません。

高齢者の方と話していると、よくこのようにおっしゃる方がいます。

「俺はどこも(体が)悪くないし、死ぬまで子どもの世話にはならない。」

現在は元気でも、将来のことは誰も分かりません。

平成28年国民生活基礎調査によると、要介護者(要介護1~5)の介護が必要となった主な原因として、第1位が認知症、第2位が脳血管疾患(脳卒中)、第3位が高齢による衰弱でした。

ある日突然脳卒中で倒れ、身体に障害が残り、自分の身の回りのことができなくなることもありえます。

また、認知症になり、必要な介護サービスの契約ができなくなる可能性もあります。

そして、高齢による衰弱は誰にでも起こり得るのです。

認知症等により判断能力が低下する前に、将来の財産管理や療養看護について、困らないように備えておくことが重要です。

その事前準備として任意後見契約が利用できるのです。任意後見契約を結んでおけば、財産管理や療養看護について、安心して老後を迎えることができるでしょう。

 

 

3.任意後見契約はいつでも結べるの?

 

任意後見契約は契約ですので、判断能力があれば、契約を結ぶことができます。

そこで、判断能力の衰えが無いか、衰えの程度が軽く、まだ契約締結能力があると判断されれば、契約することができます。

したがって、判断能力の低下後には、任意後見制度は利用できないこともあります。

そこで、高齢になり、判断能力に問題が生じる前に任意後見契約を締結することをお勧めします。

 

 

4.任意後見契約でしてもらえる仕事

 

任意後見人にしてもらう仕事の内容は、話し合いにより自由に決めることができます。

任意後見契約は委任契約の一種です。

そこで、任意後見契約では、任意後見人に付与する代理権の内容を決めることができます。

委任できることは、不動産や預貯金などの財産管理に関する法律行為と、医療や介護サービスなどの身上監護に関する法律行為などです。

どのような代理権を与えるかについては、将来判断能力が衰えたときに、どのようなサポートをしてもらいたいのかよく考えて決めることができます。

 

 

5.任意後見契約でしてもらえない仕事

 

任意後見契約では、実際に高齢者本人の身体の世話をする介護行為などの事実行為は委任できません。

では具体的に、高齢者Cさんが介護を必要とするようになった場合、任意後見人Dさんはどのようにサポートするのでしょうか。

Dさんは、Cさんの代理人として、介護事業者と契約すること(法律行為)により、Cさんが介護サービスを受けられるように手配します。実際の介護行為は介護事業者が行うことになります。

高齢者の判断能力が低下すると、介護事業者との契約自体が難しくなります。

任意後見人は、介護事業者との契約締結を代理することによって、高齢者の生活をサポートするのです。

 

 

6.任意後見契約の方式

 

任意後見契約は、必ず公正証書で締結します(任意後見契約に関する法律3条)。

公正証書とは、公証役場の公証人が作成する証書をいいます。

任意後見契約は、契約する本人の財産管理や身上監護に関するもので、老後の生活を左右する重要な契約であるため、公証人による本人の意思確認のため公正証書で締結する必要があるのです。

契約内容や本人の意思を公証人が確認して、公正証書が作成されるため、後々トラブルになりにくく、任意後見契約を締結する高齢者にとって安心できる契約方式です。

公証役場で契約を締結するには、通常は、本人と任意後見の受任者(任意後見人になることを引き受けた人)の双方が公証役場へ行く必要があります。しかし、健康上の理由などによって本人が公証役場に出向けないときには、公証人に出張してもらい、任意後見契約書を作成することができます。

任意後見契約は、公証人からの嘱託により、法務局で任意後見契約の登記がなされます。

 

 

7.任意後見はいつ開始されるのか

 

任意後見は契約しただけでは開始されません。

任意後見人の職務は、契約した高齢者本人の判断能力が衰えた状態になったときから開始されます。

具体的には、高齢者本人の判断能力が衰えた状態になったときに、任意後見受任者(任意後見人になることを引き受けた人)や親族などが、本人の同意を得て、家庭裁判所に対し、任意後見事務を開始する必要が生じたため任意後見監督人の選任の申立をします。

そして、任意後見監督人が選任されることによって、契約の効力が生じ、後見人の職務が開始されるのです。

任意後見監督人は、任意後見人の職務について監督する人です。

任意後見が開始されるときは、高齢者本人の判断能力が衰えた状態のときです。

すると、高齢者本人が任意後見人の職務の執行状況についての監督をすることは難しいといえます。そこで、任意後見監督人に任意後見人の職務の執行状況を監督してもらい、適切な財産管理および身上監護がなされるようにします。

高齢者本人にとっても、将来判断能力に問題が生じる状態となったときに、自分に代わって、任意後見人を監督する人がいて安心できる制度です。

 

 

8.任意後見契約の利点

 

法定後見制度では、被後見人(後見される人)や被保佐人(保佐される人)では、高齢者本人の行為能力(法律行為を有効に行うことができる能力)が制限されます。

そのため、欲しいものの売買ができないなど、契約締結ができないことがありえます。

ところが、任意後見契約では、高齢者本人の行為能力が制限されることはありません。

そのため、意思能力があれば、自由に第三者との売買や贈与などの契約を締結することができます。

任意後見制度は、任意後見人の支援を受けている場合であっても、自己決定権の尊重を基本理念としているのです。

高齢になり、判断能力に問題が生じた後でも、自分らしい生活スタイルを維持したい方にはお勧めの制度です。

 

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