呼寄せ介護の注意点

一人暮らしの親を介護するため、
家族が親を呼び寄せることがありえます。
そこで、
家族が遠方に一人で暮らす親を呼び寄せて介護する場合の注意点3つを解説します。
ここで説明する法制度については、2018年2月現在のものです。

親の介護を始めるきっかけベスト3

家族が親の介護を始めるきっかけは、100人いれば100通りあります。
主なものとして、
平成28年国民生活基礎調査によると、要介護者(要介護1~5)の介護が必要となった主な原因として、第1位が認知症、第2位が脳血管疾患(脳梗塞など)、第3位が高齢による衰弱でした。
(順位 要介護となった主な原因)

1位 認知症
2位 脳血管疾患
3位 高齢による衰弱

遠方に一人で暮らす親を呼び寄せて介護するきっかけ例

親の介護をどこで行うかは、
介護者側の家族の事情に影響されます。
そして、
家族が遠方に一人で暮らす親を呼び寄せて介護する場合は、100人いれば100通りの理由が考えられます。
そのうち一部をご紹介します。

親にふさわしい施設がみつからない

高齢による衰弱などで、身体能力の衰えた場合に、子どもが親の一人暮らしを心配し、親の住む地域で親にとってふさわしい施設を探していたがみつからない場合があります。仕事の都合などで遠距離介護が難しい時に、親を呼び寄せて一時的に在宅介護する場合などです。
また、親の住む地域で親にふさわしい施設が見つからない場合に、子どもの住む地域近隣で有料老人ホームなどの施設をみつけ、親を呼び寄せる場合もあります。

親が在宅を望んでいるが、一人暮らしには不安がある

親が軽度の認知症の場合に、例えば、料理をしていたことすら忘れ鍋を頻繁に焦がすようになることがあります。すると、子どもは、ガスの止め忘れによる火災などをおそれ、親の一人暮らしに不安を覚えます。その場合に、親が施設への入居を望まず、在宅を希望した場合に、一時的に子どもが呼び寄せて在宅介護する場合がありえます。

経済的に親の年金だけでは介護費用や今後の生活費をまかなえない

親が健在な時は、なんとかやりくりしていたものの、高齢になり医療費・介護費が負担になり、経済的に生活が成り立たなくなる場合があります。その場合に、子どもが親を呼び寄せて一緒に生活を始めることがありえます。

親を呼び寄せて介護する家族の注意点3つ

注意点として、手続き、経済的な面、および人間関係について説明します。

親の住民票を移していなかったため、サービスの一部が受けられない

親の住民票を移動しないまま、子どもの住所地へ転居する人がいます。
その場合、市区町村が指定する介護サービスが地域密着型サービスの場合は、原則として、住民票がないため利用できません。また、市区町村独自のサービス、例えば、配食サービスやおむつ助成なども利用できません。

経済的に苦しくても親が生活保護を受けられない可能性がある

親が経済的に自立できないので、家族が呼び寄せて介護する場合、親を呼び寄せたことにより家族も経済的に困窮する可能性が考えられます。
その場合、親に生活保護を受けてもらおうとしても、生活保護が認められない可能性があります。
生活保護の申請は原則世帯ごとに審査されます。
そこで、親と親を呼び寄せた家族を合わせて審査されます。
世帯全体の収入が最低生活費(居住地域、世帯人数、家族の年齢などをもとに、憲法25条で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために必要な金額を算出したもの)を下回っている場合に、生活保護費が支給されます。
親の年金だけでみると最低生活費を下回っていたとしても、親の年金と家族の収入を合わせて審査し最低生活費を上回った場合、親は生活保護を受けられない可能性があります。

親を呼び寄せて介護することにより家族の人間関係が変化する

親を在宅介護するため家族が呼び寄せた場合、家族間の人間関係が変化する可能性があります。
実際に、妻が一人暮らしの母親を心配して、夫の反対があったにもかかわらず呼び寄せて介護を始めたことにより、夫婦関係が悪化し離婚に至った人がいます。
また、親を呼び寄せて介護を始めたことが原因かは分かりませんが、軽度認知症の祖母との同居を始めてから、中学生の息子が不登校になり、その後ひきこもりとなってしまった人もいます。
親を呼び寄せて介護する場合、家族間の人間関係の変化にも注意を払いたいものです。

呼寄せ介護の注意点まとめ

遠方に一人で暮らす親を呼び寄せて介護する家族は、
・手続き的な面として、介護手続きに必要な親の住民票を移すことを忘れないようにしましょう。
・親を呼び寄せて家族が経済的に困窮する可能性があるのであれば、親を呼び寄せるかどうかは慎重に判断したほうがよさそうです。
・親を呼び寄せて介護することは、自分自身だけでなく、配偶者や子どもにとっても大きな負担になる可能性があり、家族間の人間関係に変化をもたらすこともありえるので、家族でよく話し合ってから決めたほうがよさそうです。

一般社団法人マイライフ協会

代表理事 児玉浩子