認知症で金銭管理ができなくなったらどうするの?
久しぶりに実家に帰ったときに、通帳や印鑑の保管場所を忘れていたり、いらない物を大量に買って、部屋に積み重ねていたり、親が認知症になって、金銭管理ができなくなる場合もあります。
親の物忘れや、掃除をしてない部屋の様子から、親が認知症になったのではないかと不安に感じることがあります。
そのようなとき、どのようにすればいいのでしょうか。
認知症など、介護は突然やってくる
介護の始まり方は、100人いれば100通りあります。
主なものは、
平成28年国民生活基礎調査によると、要介護者(要介護1~5)の介護が必要となった主な原因として、
第1位が認知症、
第2位が脳血管疾患(脳梗塞など)、
第3位が高齢による衰弱でした。
1位 | 認知症 |
2位 | 脳血管疾患 (脳梗塞など) |
3位 | 高齢による衰弱 |
認知症になったとき、預貯金がおろせない!
親の介護が始まると、
介護費用や入院費用が必要となります。
親は認知症などで、自分で金銭管理ができません。
そこで、
子どもは、当然、親の預貯金から支払えるものだと考えます。
しかし、
親が認知症になると、子どもは親の預貯金を下すことはできません。
かつては、
子どもが親の介護をするのが当たり前であり、子どもであれば、郵便局や銀行で親の預貯金を引き出すことができました。
ですが、近年では、
親の預貯金をかってに使い込む子どもがいたこともあり、
金融機関では、
親の預貯金を子どもが勝手に引き出すことができなくなりました。
認知症のとき、金銭管理を子どもが代わりにする方法
成年後見制度を利用する
親が認知症などで、金銭管理ができなくなった場合、どうしたらいいのでしょうか。
認知症や脳梗塞などの脳血管障害により判断能力に問題が生じた場合、銀行や郵便局で預貯金の引き出しができなくなります。
その場合、
子どもなどの親族に対し金融機関から、成年後見制度の利用を求められます。
「成年後見制度」とは、
認知症や精神障害などにより判断能力が低下した人の、医療・介護契約や財産管理の代理をすることで、認知症等になった本人の生活を支援する制度です。
親が認知症になり、金銭管理を行えなくなってから利用できるのは、法定後見制度です。
法定後見制度は、以下の3タイプあります。
後見人等は、
認知症などになった本人の生活状況に応じた支援(身上監護)と財産管理を行います。
種類 | 申立て時の本人の判断能力 |
後見 | 欠く常況 |
保佐 | 著しく不十分 |
補助 | 不十分 |
子どもは、
親の状況をみて、家庭裁判所へ申立てます。
法定後見制度の申立て費用
親が認知症などで、金銭管理ができないため、法定後見制度を利用する場合、申立てに費用がかかります。
親族が自分ですべての手続きを行う場合、後見申立ての費用は以下の通りです。
以下の費用以外にも、
戸籍謄本、登記事項証明書、診断書などの書類を入手するための費用が別途かります。
もし後見申立てにかかる手続を弁護士に依頼する場合、下記費用とは別に報酬等として約30万円かかります。
申立手数料(収入印紙) | 800円 |
登記手数料(収入印紙) | 2,600円 |
その他 | 連絡用の郵便切手、鑑定料 |
法定後見制度を利用すると、子どもは親の金銭管理をかわりにできるの?
子どもが、認知症の親に代わって金銭管理するためには、子ども自身が、後見人等に選ばれる必要があります。
しかし、
後見人等は家庭裁判所が選任するため、子どもが選ばれない可能性もあります。
その場合、
後見人等へ親の財産から毎月報酬を払う必要もあります。
そのこともあり、法定後見制度の利用をためらう子どもが多いようです。
認知症になり、金銭管理できなくなることに備える方法
では、親が認知症になり、金銭管理できなくなるときに備える方法はないのでしょうか。
実は、あります。
事前に準備できる成年後見制度があるのです。
それが、任意後見契約です。
これは、
親と子どもとの間で、契約により、後見契約を締結するものです。
親と子どもが、親が認知症になった場合に備えて、事前に任意後見契約を締結しておけば、親が認知症などで金銭管理できなくなってから、子どもが任意後見契約に基づいて、親に代わって金銭管理できるのです。
契約ですから、
親が認知症になると契約できません。
事前に準備することが必要となります。
認知症で金銭管理ができなくなったらどうするの?まとめ
①親が認知症になると、子どもでも金融機関でお金を引き出すことはできなくなる。
②親が認知症で金銭管理ができなくなると、金融機関で法定後見制度の利用を求められる。
③親が認知症で金銭管理できなくなる場合に備えて、事前に任意後見契約を締結することができる。
親が認知症などで金銭管理ができなくなると、法定後見制度を利用する必要があります。
法定後見制度では、
後見人を家庭裁判所が選任するため、子どもが後見人になれるとは限りません。
そこで、
親が認知症などで金銭管理できなくなる前に、事前に親と子どもで任意後見契約を締結しておきましょう。
事前に準備することで、親が認知症などで金銭管理できなくなったとしても、子どもが金銭管理を引き継げ、スムーズに介護費用や入院費用を、金融機関から引き出すことができます。
一般社団法人マイライフ協会
代表理事 児玉浩子