終活には欠かせない「死後事務委任契約」とは
終活において、お葬式やお墓の準備をしている人は多いことでしょう。
お葬式やお墓への埋葬をしてくれる人がいない場合には、してくれる人の確保が必要となります。そのために必要な契約が「死後事務委任契約」です。
「死後事務委任契約」について、
私の著書「99パーセントの人が知らない老後の安心をデザインする方法」から抜き出して説明します。
死後事務委任契約を締結しておかないと、終活してもお葬式ができない
財産管理契約も任意後見契約も、契約期間は、高齢者本人が生存している間です。
そのため、
高齢者本人が亡くなると、受任者や任意後見人は、高齢者のための事務処理ができなくなります。
高齢者本人の死亡後には、相続人の権限内での財産管理が始まります。
財産管理契約の受任者も任意後見人も、財産管理契約や任意後見契約だけでは葬儀や埋葬はできないのです。
そこで、必要となるのが「死後事務委任契約」です。
死後事務委任契約で終活としてお葬式をする方法
では、財産管理契約の受任者や、任意後見契約の任意後見人は高齢者本人のお葬式や埋葬をする方法が無いのでしょうか。
実は、お葬式や埋葬をする方法があります。それは、死後事務について委任契約を締結する方法です。
一般的に、「死後事務委任契約」と呼ばれます。
委任契約である財産管理契約や任意後見契約は、委任した高齢者本人が亡くなると終了するのが原則です。
その後は、
財産管理契約の受任者や任意後見契約の任意後見人は、委任事務の処理を相続人等に引き継ぐことになります。
そこで、
高齢者本人の死亡後にも、各種支払等や葬儀、埋葬についても、財産管理契約の受任者や任意後見人に対し委任しておきたいという希望がある場合には、別に委任契約を締結する必要があります。
これが、「死後事務委任契約」です。
具体的には、
「財産管理契約及び任意後見契約」と同一の公正証書に別個の契約として委任事項を記載しておくことができます。また、「財産管理契約及び任意後見契約」とは別に委任契約を公正証書で作成することもできます。
葬儀や埋葬について希望がある場合には、死後事務委任契約で契約内容について決めておくことができます。
例えば、
親族はいるが皆遠方に住んでいるため葬儀は火葬だけにし、親族のお墓には入れないので合葬墓の手配をして欲しいことなどの希望を伝えることができます。
そして、
亡くなった後に、連絡して欲しい親族や友人についての意思表明をすることもできます。
これにより、
本人の死亡後であっても、委任契約に基づき、財産管理契約の受任者や任意後見人に、希望通りの葬儀、埋葬してもらうことができます。
終活で葬儀社やお墓を決めても死後事務委任契約を締結しておかないと実行されない
一人暮らしの高齢者と話しているとよくこのように言われます。
「もうお葬式を申込んだし、お墓も買ったから大丈夫。」
これは本当でしょうか。
たとえ葬儀や墓地の契約を生前にしていたとしても、亡くなったときに契約内容が履行されるとは限りません。契約内容を履行してもらうには、葬儀や埋葬を行う人が故人の契約を知っていなければなりません。
そして、
葬儀社や墓地の管理会社へ連絡してもらう必要があるのです。
まわりに頼れる親族や友人がいない場合には、葬儀社や墓地の管理会社へ連絡を取ってくれる人がいない場合も考えられます。
そのような場合でも、
事前に死後事務委任契約を締結して、葬儀や埋葬の手続きなどの事務を依頼しておけば、生前の希望がかなえられます。
終活としてお墓を買うときには死後事務委任契約を引き受けてくれた人とよく相談する
先日ご相談にいらした80代男性から聞いた話です。
離婚しておひとりさまということでした。子どももおらず、一人暮らしです。
数年前に、終活の一環として、近所のお寺で分譲されていたお墓を購入したそうです。購入後、お寺の住職と話していたところ、男性が身寄りのないことを話したところ、
「保証人がいないと、お墓に入れない」
と言われたそうです。
何度相談に行っても、同じ答えで、困っているとのことでした。
終活としてお墓を購入する場合には、
死後事務委任契約を締結して、埋葬してくれる人を確保してから、お墓を購入することをお勧めします。
そして、
終活としてお墓を購入するときにも、身寄りがいない場合には、埋葬後に無縁墓になる可能性が高いので、住職に埋葬を拒否される可能性もあります。
よく検討してから、購入することをおすすめします。
終活で必要な死後事務委任契約でできること
葬儀・埋葬以外に、死後事務委任契約でできることがあります。
- 役所への届出
- 死亡した事等、家族や友人などへの連絡
- 生前の医療費など未払分の精算
- 遺品整理及び住まいの処分
- 各種サービス(電話、インターネットなど)の解約
「死後事務委任契約」では、
故人について残った事務すべてを依頼することができます。どのようなことを頼むか生前に相談して決めることができるので、安心です。
終活には欠かせない「死後事務委任契約」とは・まとめ
- おひとりさまが葬儀・埋葬をするには、死後事務委任契約でしてくれる人の確保が必要
- おひとりさまでなくても、葬儀・埋葬をしてくれる人がいないときにも、死後事務委任契約でしてくれる人を確保する必要がある
- 死後事務委任契約では、葬儀・埋葬以外のこともお願いできる
終活として「死後事務委任契約」を上手に活用していきましょう。
一般社団法人マイライフ協会
代表理事 児玉浩子